新国立劇場におけるロッシーニ《ウィリアム・テル[ギヨーム・テル]》の原語による日本初演を記念し、会場のホワイエにて、筆者コレクションの資料展示「セミラーミデからギヨーム・テルまで」が実施されました。ここに特設サイトを設置し、展示資料の写真と説明文を掲載します。
2024年11月20日開設。同月26日、A4版4枚の展示説明文を掲載。(水谷彰良)
新国立劇場《ウィリアム・テル》のチラシと情報誌「ジ・アトレ」10月号における10月号における紹介文
A4版4枚の展示説明文
ロッシーニ『ウィリアム・テル』資料展示
── 歌劇『セミラーミデ』から『ギヨーム・テル』まで ──
From «Semiramide» to «Guillaume Tell» by Gioachino Rossini (Exhibition curated by Akira Mizutani)
2024年11月20日、23日、26日、28日、30日 新国立劇場ホワイエ
展示品と説明文:水谷彰良
新国立劇場ホワイエの展示スペース
ケース①②③の展示品
ケース④⑤⑥の展示品
展示ケース① 『セミラーミデ』とパリ・ロンドン訪問(1823-24年)
① 30歳のロッシーニ(リトグラフ。パリ、ブレゾル社、1830年頃)
Portrait de Gioachino Rossini, Lithographie, Blaisol, Paris, vers 1830.
1822年にウィーンを訪問したロッシーニを描いたフリードリヒ・リーダー(Friedrich Lieder, 1780-1859)の肖像画を基にイポリート=ルイ・ガルニエ(Hippolyte-Lous Garnier, 1802-55)が制作したリトグラフ。
② イザベッラ・コルブランの肖像(油彩。ミラノ・スカラ座博物館所蔵。絵葉書複製)
Isabella Colbran, by Johann Heinrich Schmidt, Museo del Teatro alla Scala. Milan
(Postcard)
ナポリのサン・カルロ劇場のプリマ・ドンナ、イザベッラ・コルブラン(Isabella Colbran, 1784-1845)はロッシーニと結婚し、新作『セミラーミデ』(1823年2月3日ヴェネツィアの
フェニーチェ劇場初演)のタイトルロールを歌った。これはヨハン・ハインリヒ・シュミット
(Johann Heinrich Schmidt, 1749-1829)が1817年に描いた肖像画の絵葉書複製。
③ 歌劇『セミラーミデ』初期版(ピアノ伴奏譜。パリ、シュレザンジェ社、1824年頃)
Rossini, Semiramide, partition pour Piano et Chant, Paris, Maurice Schle- singer, vers 1824.
イタリアで初演されたロッシーニ最後の歌劇『セミラーミデ』の初版楽譜は1823年にウィ ーンで出版された。これは翌1824年パリのシュレザンジェ社が出版したピアノ伴奏譜で、 アルサーチェに殺されるセミラーミデがタイトル頁に描かれている。
④ レチタティーヴォを含む『セミラーミデ』初版楽譜(ミラノ、リコル
ディ社、1825年)
Rossini, Semiramide, Edizione completa per forte piano e canto, Milano, Gio. Ricordi, 1825.
ミラノのリコルディ社が1825年に出版したこのピアノ伴奏譜が、レチタティーヴォを含む『セミラーミデ』の初版楽譜。
⑤ 音楽雑誌『ハーモニコン』1823年10月号(ロンドン、ウィリアム・
ピノック社、1823年)
The Harmonicon, A Journal of Music, No. X, October, William Pinnock, London, 1823.
1823年1月にロンドンで創刊された月刊音楽新聞『ハーモニコン』の10月号に掲載されたロッシーニの略伝。肖像は合本に挿入された、ロッシーニの友人ピエトロ・フォーロ(Pietro Folo,1790-1867)が描いた肖像画に基づく銅版画。
⑥ ロッシーニの署名入り書簡(不詳の公爵夫人宛。[パリ] 1824年9月10日付)
Lettre signée de G. Rossini, À Madame La comtesse [C…], [Paris] le 10 7bre 1824.
ロッシーニは1823年11月9日にパリを初訪問し、12月13日から翌年7月26日までのロンドン滞在を経て8月1日パリに戻り、9月12日、帰国の途に就いた。パリを発つ2日前に書かれたこの書簡は判読不明の伯爵夫人に宛てられ、明日11時と正午の間に訪ねていただければ幸いですと書かれている。パリ滞在中のロッシーニ書簡はこれを含めて3通のみ現存。
⑦ スタンダール『ロッシーニ伝』初版(パリ, オーギュスト・ブラン社, 1824年)
Stendhal, Vie de Rossini, Chez Auguste Boulland et Cie, Paris, 1824.
31歳までのロッシーニの半生と歌劇の特色を活写したスタンダール(Stendhal [本名Henri Beyle], 1783-1842)の『ロッシーニ伝』初版本。タイトル頁に1824年とあるが、ロッシーニのパリ訪問に合わせて1823年11月に出版された。肖像はレーオポルト・バイヤーが描いた肖像画を基にアンブロワーズ・タルデュー(Ambroise Tardieu, 1788-1841)が制作した銅版画。
⑧ スタンダール『ロッシーニ伝』英語版初版(ロンドン, トーマス・フッカム社, 1824年)
Stendhal, Memoirs of Rossini, T. Hookham, London, 1824.
スタンダールの名を掲げず「ハイドン・モーツァルト伝の著者Author of The Lives of Haydn and Mozart」による書として出版された『ロッシーニ伝』の英語版。肖像はチャールズ・ハルマンデル(Charles Hullmandel, 1789-1850)が制作した。
展示ケース② パリ・オペラ座での初演作(1826~28年)
⑨ ロッシーニ自筆書簡(オデオン劇場の監督宛、[パリ]、1826年9月18日付)
Lettre autographe signée de G. Rossini, À Monsieur, [Paris], le 18. 7bre 1826.
1826年9月15日パリのオデオン劇場でロッシーニの楽曲を用いた歌劇『イヴァノエIvanhoè』が初演され、大成功を収めた。これは9月18日にロッシーニがオデオン劇場の監督に送った手紙。「『イヴァノエ』上演へのご尽力に感謝いたします。成功の大部分は貴方のご苦労に負っております」と前置きし、指揮者と歌手全員の名前を列挙して感謝の意を表している。
⑩ ロッシーニの署名入り書簡(評論家サウロ氏宛、[パリ], 1826年10月19日)
Lettre signée de G. Rossini, À Monsieur Sauro, [Paris], le 19. 8bre 1826.
1826年10月11日付の新聞『ル・モニトゥールLe Moniteur』に掲載された『コリントの包囲』初演批評で「オペラ座の革命の合図となる作品」と絶賛した評者サウロ氏に宛てたロッシーニの礼状。王立音楽アカデミーと王立イタリア劇場の共通便箋を用い、「ご厚情に値するよう精進します」と書かれている。署名以外は王立イタリア劇場支配人による代筆。
⑪ 歌劇『コリントの包囲』初版楽譜(ピアノ伴奏譜。パリ、トルプナ社、1826年)
Rossini, Le Siège de Corinthe, partition pour Piano et Chant,
Edition Nicolo, Paris, E. Troupenas, 1826.
『コリントの包囲』は旧作『マオメット2世』(1820年ナポリ初演)のフランス語改作。1826年10月9日にパリ・オペラ座(王立音楽アカデミー)で行われた初演は大成功を収めた。展示は1826年にトルプナ社が出版した初版楽譜。
⑫ 歌劇『モイーズとファラオン』初版楽譜(ピアノ伴奏譜。パ
リ、トルプナ社、1827年)
Rossini, Moïse, partition pour Piano et Chant, Edition Nicolo,
Paris, E. Troupenas, 1827.
『モイーズとファラオン』は旧作『エジプトのモゼ』(1818年ナポリ初演、1819年改訂)のフランス語改作。1827年3月26日にパリ・オペラ座で初演され、成功を収めた。展示は1827年にトルプナ社が出版した初版楽譜。
⑬ 歌劇『オリー伯爵』初版楽譜(ピアノ伴奏譜。パリ、トルプナ
社、1828年)
Rossini, Le Comte Ory, partition pour Piano et Chant, Edition
Nicolo, Paris, E. Troupenas, 1828.
『オリー伯爵』は旧作『ランスへの旅』(1825年)から6曲を転用したフランス語の喜歌劇。『ギヨーム・テル』に割り込む形で作られ、1828年8月20日パリ・オペラ座の初演で大成功を収めた。展示は1828年にトルプナ社が出版した初版楽譜。
展示ケース③『ギヨーム・テル』の原作と台本作家たち
⑭ シラーの肖像(リトグラフ。パリ、ブレゾー社、1840年頃)
Portrait de Friedrich Schiller, Lithographie, chez Blaisot, Paris, vers 1840.
パリのブレゾー社が1840年頃に制作したフリードリヒ・シラー(Johann Christoph Friedrich Schiller, 1759-1805)の肖像画。
⑮ シラーの戯曲『ヴィルヘルム・テル』(コッタ書店のシラー全集1827年版、第8巻)
Schiller, Sämmtliche Werke, Band 8, Cotta'sche Buchhandlung, Stuttgart und Tübingen, 1827.
シラーの戯曲『ヴィルヘルム・テル』は1804年にヴァイマル宮廷劇場で初演され、同年テュービンゲンのコッタ書店から出版された。展示は1827年にコッタ書店が発売したシラー全集の第8巻で、戯曲『メッシーナの花嫁』と『ヴィルヘルム・テル』を掲載。
⑯ フロリアン『ギヨーム・テル、または自由なスイス』(パリ, 革命暦第9年, 1801年)
Jean-Pierre Claris de Florian, Guillaume Tell, ou la Suisse libre, Librairie économique, Paris, An IX / 1801.
ジャン=ピエール・クラリス・ド・フロリアン(Jean-Pierre Claris de Florian, 1755-1794)が革命期に獄中執筆した長編散文詩『ギヨーム・テル、または自由なスイス』(1800年パリで没後出版)は、シラーの『ヴィルヘルム・テル』と共に歌劇『ギヨーム・テル』の重要な原作。展示は最初期のエディションで革命暦9年、1801年の出版。
⑰ パリ・オペラ座の内部(銅版画に手彩色。ロンドン、1830年)
Académie Royale de Musique in Paris, Original steel engraving, London, 1st September 1830.
1830年にロンドンのロバート・ジェニングス&ウィリアム・チャップリン社が作成したパリ・オペラ座(王立音楽アカデミー劇場)の内部とプロセニアムの一部を描いた鋼版画(手彩色)。1830年9月1日とある。
⑱ 台本作家ビス自筆書簡(劇作家ヴィアル宛、『ギヨーム・テル』初演前日
1829年8月2日付)
Lettre autographe signée d’Hippolyte Bis, À Monsieur Vial homme de lettre, [Paris], le 2 août 1829.
台本作家ビスが『ギヨーム・テル』の初演前日に劇作家ジャン=バティスト=シャルル・ヴィアル(Jean-Baptiste-Charles Vial, 1771-1837)に宛てた書簡。明朝拙宅にチケットを取りに来てくださいと伝え、平土間しか差し上げられませんと詫びている。
⑲ 台本作家ビス自筆書簡(印刷業者デュヴェルジェール宛、1829年8月18日)
Lettre autographe signée d’Hippolyte Bis, À l’imprimeur Eugène Duverger, [Paris], le 18 août 1829.
台本の印刷業者ウジェーヌ・デュヴェルジェール宛の書簡。『ギヨーム・テル』リブレットの残部500部が出版社ルレRoulletに納入されていないと苦情を述べ、それを知ったらド・ジュイ氏が激怒するだろうと警告している。
⑳ 台本作家ビス自筆書簡(印刷業者デュヴェルジェール宛、1832年1月21日)
Lettre autographe signée d’Hippolyte Bis, À l’imprimeur Eugène Duverger, [Paris], le 21 janvier 1832.
印刷業者ウジェーヌ・デュヴェルジェールに宛てた、『ギヨーム・テル』のリブレット第2版に関する書簡。裏面にデュヴェルジェールの返信の下書きが記されている。
㉑ 台本作家イポリート・ビスの肖像(リトグラフ、パリ、ジャネ社、1829年)
Portrait d’Hippolyte-Louis-Florent Bis, Lithographie, chez Janet, Paris, 1829.
イポリート=ルイ=フロラン・ビス(Hippolyte-Louis-Florent Bis, 1789-1855)は1822年にオデオン座で悲劇『アッティラ』を初演して大成功を収めた劇作家。病気のジュイに代わって『ギヨーム・テル』の台本を改作した。これは画家アンリ・セリュール(Henri Auguste César Serrur, 1794-1865)が1829年に描いた肖像画に基づくリトグラフ。
㉒ 台本作家エティエンヌ・ド・ジュイの肖像(リトグラフ、パリ、1830年頃)
Portrait de Victor-Joseph-Étienne de Jouy, Lithographie, Couché fils, Paris, vers 1830.
『ギヨーム・テル』の台本作家ヴィクトル=ジョゼフ=エティエンヌ・ド・ジュイ(Victor-Joseph-Étienne de Jouy, 1764-1846)は、スポンティーニ『ヴェスタの巫女』(1807年)の台本で大成功を収め、1815年アカデミー・フランセーズ会員に選出された。これはアンリ・ボンヴォワサン(Henry Bonvoisin, 1752-1837)が1830年頃に作成したリトグラフ。
展示ケース④ 『ギヨーム・テル』の初版楽譜 (1829年。ピアノ伴奏譜と総譜)
㉓ テルのエール「動いてはいけない」ピース初版(パリ、トルプ
ナ社、1829年)
Rossini, Sois immobile, morceau détaché de Guillaume Tell, Piano et Chant, E. Troupenas, Paris, 1829.
トルプナ社はピアノ伴奏譜完本とは別に楽曲単位のピース版も出版した。展示は第3幕テルのエール「動いてはいけない」のピース初版。「ダバディ氏が歌ったロマンス」として独立させ、新たな楽曲ナンバーとプレート番号を与えている。
㉔『ギヨーム・テル』ピアノ伴奏譜初版(初刷。パリ、トルプナ
社、1829年。価格60フラン)
Rossini, Guillaume Tell, partition pour Piano et Chant, E. Troupenas, Paris, 1829.
『ギヨーム・テル』の初版楽譜は、ロッシーニから版権を購入したパリのトルプナ社が初演前の自筆譜を基に作成した。ピアノ伴奏譜はルイ・ニデルメイエールの編曲で1829年8月に完成し、9月に出版された。展示は初版初刷で価格60フラン。
㉕『ギヨーム・テル』総譜初版(初刷。パリ、トルプナ社、1829
年。第1幕)
Rossini, Guillaume Tell, partition dédié au Roi, E. Troupenas, Paris, 1829.(Acte 1)
『ギヨーム・テル』の総譜は1829年12月にフランス王シャルル10世に献呈出版された(全837頁)。校正はトルプナ社の求めで26歳のベルリオーズが行った。展示は全2巻に装丁された初版初刷、価格180フランの第1分冊。
㉖『ギヨーム・テル』総譜初版(初刷。第2~4幕)
Rossini, Guillaume Tell, partition dédié au Roi, Paris, E. Troupenas, 1829.(Actes 2-4)
全2巻に装丁された『ギヨーム・テル』初版初刷の第2分冊(第2~4幕)。校正したベルリオーズは1830年1月トルプナ社から200フランの報酬を得て、『幻想交響曲』の作曲に着手した。
展示ケース⑤『ギヨーム・テル』初演の衣装デザイン、1831年のテルと1837年のアルノルド
㉗㉘㉙『ギヨーム・テル』初演歌手の衣装デザイン(ロッシーニ財団による複製)
Costumes créés par Hippolyte Lecomte pour la première de Guillaume Tell(Reproduction)
画家イポリート・ルコント(Hippolyte Lecomte, 1781-1857)による『ギヨーム・テル』初演の衣装デザイン。㉗マティルド ㉘アルノルド ㉙ジェスレルのためのデザイン パリ・オペラ座博物館所蔵の原画のロッシーニ財団による原寸大の複製。
㉚ ギヨーム・テル役のアンリ=ベルナール・ダバディ(油彩、1831年。ロッシーニ財団による複製)
Henri-Bernard Dabadie dans le rôle de Guillaume Tell, Opéra de Paris, 1831(Reproduction)
ギヨーム・テル役を創唱したアンリ=ベルナール・ダバディ(Henri-Bernard Dabadie, 1797-1853)は、『モイーズとファラオン』のファラオンを初演したバス歌手。これは1831年にダバディがパリ・オペラ座で演じたテルを描いた油彩のロッシーニ財団による複製(縮小版)。
㉛㉜㉝㉞『ギヨーム・テル』初演のダンサーと助演(ロッシーニ財団による複製)
Costumes des danseurs et acteurs de Guillaume Tell, chez Hautecœur-Martinet, Paris, 1829.(Reproduction)
『ギヨーム・テル』初演で踊ったダンサーと助演を描いた1829年パリのオートクール=マルティネ社による彩色彫版画のロッシーニ財団による複製。㉜パ・ド・トロワを踊るマリー・タリオーニ(Marie Taglioni, 1804-84)は後に『シルフィード』初演で大成功を収める。
㉟ アルノルド役でセンセーションを巻き起こしたデュプレ(リトグラフ。パリ、マルシャン社、1841年)
Portrait de Gilbert Duprez [Arnold de “Guillaume Tell”], Lithographie, Marchant, Paris, 1841.
ジルベール・デュプレ(Gilbert Duprez,1806-96)は、1837年オペラ座の『ギヨーム・テル』再演で胸声のドを適用してセンセーションを巻き起こした。これはアルノルド役の衣装をつけたデュプレのリトグラフ。
展示ケース⑥『ギヨーム・テル』の受容と流布(1829~40年)
㊱『ギヨーム・テル』ドイツ圏の初版(ピアノ伴奏譜。マイ
ンツ、ショットの息子社、1829年)
Rossini, Guillaume Tell / Tell, Vollstaendiger Clavier-
Auszug, B. Schott's Söhne, Mainz, 1829.
トルプナ社からオーストリア帝国以外のドイツ圏の版権を得たマインツのショットの息子社によるピアノ伴奏譜初版。歌詞にフランス語とドイツ語(テオドール・フォン・ハウプト訳)を併記し、1830年3月のフランクフルト初演とその後のドイツ語上演の原本となる。
㊲『ギヨーム・テル』オーストリア帝国の初版(ピアノ伴奏譜。ウィーン、
アルタリア社、1830年)
Rossini, Guglielmo Tell, ridotta per Pianoforte con Canto, Artaria, Vienna, 1830.
トルプナ社からオーストリア帝国における版権を取得したウィーンのアルタリア社によるピアノ伴奏譜初版。歌詞にルイージ・バロッキ訳のイタリア語と前記ハウプト訳のドイツ語を併記し、題名にイタリア語の『グリエルモ・テル』を用いる。
㊳『ヴァッラーチェ』のリブレット(ミラノ、1836年)
Libretto: Rossini, Vallace, Milano, 1836.
ロッシーニ『ギヨーム・テル』はイタリアの検閲を通らず、カリスト・バッシが政治性を弱めた『グリエルモ・テル』が1831年ルッカの初演で使われた。ミラノの検閲が『グリエルモ・テル』を不許可としたためスカラ座は中世スコットランドに時と場所を移した『ヴァッラーチェ』を作成し、1836年12月26日に初演した。展示はミラノ・スカラ座初演のリブレット。
㊴ 歌劇『ヴァッラーチェ』第4幕フィナーレのストレッタ初版楽譜
(ミラノ、リコルディ社、1837年)
Rossini, Vallace, Stretta del Finale dell’ Atto 4.˚, G. Ricordi, Milano, 1837.
1836年12月26日にミラノ・スカラ座で初演された改作版『ヴァッラーチェ』
第4幕フィナーレのストレッタの初版楽譜。
㊵ ロッシーニを中心にした当代作曲家の肖像(パリ、ラ・フランス・ミュジカル
社、1840年代半ば)
Compositeurs contemporains, Lithographie, La France Musicale, Paris, mid-1840s.
『ラ・フランス・ミュジカル』は1837年に創刊された音楽週刊誌。展示は同社が1840年代半ばに制作した9人の当代作曲家で構成したリトグラフで、ロッシーニを中心に番号を付している──「1 ロッシーニ」「2 マイアベーア」「3 オベール」「4 アレヴィ」「5 ドニゼッティ」「6 アダン」「7 ラバール」「8 クラピソン」「9 トマ」。
情報センター閲覧室の展示
新国立劇場 5階の情報センター閲覧室でも期間中に関連展示を行っています。
情報センターにおける展示(周辺とケース①②③)
展示ケース①
① 木彫りのウィリアム・テル像(作者不明のミニチュア木彫り像。20世紀初頭)
② ロッシーニの顔のカリカチュア(ペーザロのアーティストによる塑像。20世紀末)
③ 1929年のパリ・オペラ座『ギヨーム・テル』公演プログラム
④『ギヨーム・テル』のカード6枚(リービッヒ社のクロモリトグラフ・カード、1938年)
⑤ シルレル作『ウヰルヘルム・テル』舟木葉之助 訳、大正4年
⑧~⑫ 日本における楽曲の器楽編曲5点(大正11年~昭和2年)
⑧ ヴァイオリン/マンドリン二部合奏編曲『ウイリアムテル』(紅洋樂譜出版社、大正11年。2版)
⑨『ハクビハーモニカ樂譜No.3/序曲 ウヰリアムテル』(春柳振作編曲、白眉出版社、大正12年)
⑩ ハーモニカ・シート樂譜『序樂 ウイリアム・テル』(ハーモニカ・シート樂譜出版社、大正12年)
⑪ ハーモニカ二重奏『ウイリアムテル』(川口章吾編曲、共益商社書店、大正14年)
⑫ ハーモニカ三重奏『ウイリアムテル』(松原千加士編曲、シンフォニー樂譜出版社、昭和2年)
他に、情報センター所蔵の次の2点も展示
⑥ シルレル作『うゐるへるむ・てる』佐藤芝峰 訳、明治38年(情報センター所蔵)
⑦ シルレル作『うゐるへるむ・てる』林 鴎南 訳、大正4年(情報センター所蔵)
展示ケース②
⑬~㉖ 13の挿画を含む『ギヨーム・テル』ピアノ伴奏譜(パリ、タランディエ社、1900年頃)
⑬ ジュール・タランディエ社(Jules Tallandier)の挿絵入りピアノ伴奏譜(パリ、1900年頃。以下は該当頁のコピー)
⑭ 第二タイトル頁 ⑮ 第1幕アルノルドとテルの二重唱 ⑯ 第1幕 ルートルドの登場シーン ⑰ 第1幕 フィナーレ
⑱ 第2幕 マティルドとアルノルドの二重唱 ⑲ 第2幕の三重唱 ⑳ 第2幕フィナーレ ㉑ 第3幕マティルドとアルノルド
㉒ 第3幕 皇帝を象徴する帽子に頭を下げるスイスの民衆 ㉓ 第4幕 父の家で仲間と再会するアルノルド
㉔ 第4幕 ジェミを連れたマティルドがエドヴィージュと再会する ㉕ 第4幕 舟から飛び降りたテルが足で舟を押し戻す
㉖ 第4幕 ジェスレルを弓で射倒すテル
展示ケース③
㉗ 1988年ミラノ・スカラ座『グリエルモ・テル』。キャスト表とプログラム
㉘ 2010年チューリヒ歌劇場、1995年と2013年ロッシーニ・オペラ・フェスティバルのプログラム
㉙ ロッシーニ財団の『ギヨーム・テル』クリティカル・エディション(総譜、全6巻 [4巻+校註書2冊]、1992年)